長い間、受け継がれてきたお墓。ひと昔前までは「両親が亡くなると、その子どもがお墓の管理を引き継ぐ」という風潮がありました。

お墓の相続で揉めるというケースは少なく、当たり前のように、代々引き継がれてきたはずです。

しかし現在では、お墓に対する価値観が大きく変化したことや時代の流れに伴い、お墓の継承がスムーズにできなくなっています。

お墓の相続を放棄することは可能なのでしょうか？また、相続放棄すると、お墓はどうなってしまうのでしょう。

そこで本記事では、相続放棄した場合、お墓はどうなってしまうのか？お墓を引き継ぎたくない場合の対処法や費用について詳しく解説していきます。

「お墓の管理は難しいので、何とかしたい」「相続放棄すれば、お墓を継承しなくて済む？」といったお悩みをお持ちの方の参考になると幸いです。

相続放棄するとお墓はどうなるの？

お墓の管理を任されると困るため、相続放棄を検討している方もいるかもしれません。

しかし、お墓の相続は「相続財産」ではなく「祭祀財産」に分類されます。

したがって、相続放棄を行なっても、お墓の継承をしなくて良いというわけではありません。

お墓は祭祀財産のため相続放棄の対象外となる

そもそも「祭祀財産」とは、どのようなものなのでしょうか？

祭祀財産とは、先祖を祀るために必要となる財産の総称で、相続税の非課税財産に分類されます。

祭祀財産の具体例として、下記のようなものがありますので確認しておきましょう。

などが挙げられます。

相続放棄しても祭祀継承者はお墓を継承しなければならない

お墓は、祭祀財産に分類されるため、相続放棄の対象外となることはわかりました。

しかし中には「お墓の管理ができないので、継承するのは避けたい」と考えている方も多いはずです。

相続放棄をしても、祭祀継承者であれば、お墓を継承しなくてはなりません。

例えば、被相続人（亡くなった人）の遺産に、負債が多く含まれていれば、相続放棄するケースが多いはずです。相続放棄することによって、借金を背負わずに済みます。

この時「お墓の管理も面倒なので、遺産と一緒に相続放棄できる」と思われがちですが、そうではありません。

基本的に、祭祀継承者は辞退することができず、意思表示を行っても回避できないのが特徴です。被相続人（亡くなった人）に祭祀継承者として指名された方は、お墓を継承する義務があります。

「そもそも祭祀継承者って？」「祭祀継承者は、どのように決められるの？」と疑問に感じた方は、下記の記事で詳しくまとめています！

ぜひ合わせてチェックしてみてくださいね。

お墓を放置してしまうとどうなる？

それでは、お墓を放置してしまった場合どうなるのでしょうか？

祭祀継承者が何らかの理由でお墓を放置してしまった場合、いずれお墓は撤去されることとなり、ご遺骨は合祀墓へと移動されます。

しかし、放置したからといって、すぐに撤去されるわけではありません。

撤去までの流れは、下記のようなものになるのが一般的です。

基本的には上記のような流れで、お墓が撤去されることとなります。

督促状に記載されている支払い期限は、それぞれの霊園や墓地によって異なるため注意が必要です。

また、故意にお墓の管理を放置するケースだけではありません。

例えば、お墓を管理していた方が突然亡くなった場合。祭祀継承者に指名できる人がおらず、独り身の可能性も考えられます。

この場合、必然的に管理できる人がいなくなってしまうのです。これを「無縁墓（むえんぼ）」といいます。

近年、少子高齢化による後継者不足や地方の過疎化・お墓に対する価値観の変化などにより、無縁墓が急増しているのが現状です。

お墓を継承したくない場合の対処法

それでは、お墓の管理が難しく継承したくない場合には、どのような対処法があるのでしょうか？

まず、被相続人（亡くなった方）が祭祀継承者を指名していなかった場合、相続人間での話し合いがまとまらない時には「家庭裁判所」において調停または審判で祭祀継承者を決めてもらうことができます。

ここでは、祭祀継承者がお墓を継承したくない場合の対処法について確認していきましょう。

ひとつずつ解説していきます。

墓じまいをする

「お墓を継承したくない」「忙しくて、管理するのが難しい」という場合は、墓じまいの検討がおすすめです。

墓じまいとは、今あるお墓を撤去し墓地を更地に戻すこと。使用権も返還することになります。

墓じまいの際に取り出されたご遺骨は、新たな場所に納骨します。

この一連の流れを「墓じまい」といい、さまざまな行政手続きが必要です。

墓じまいの意味や費用の詳細・新しい納骨先については、下記の記事で詳しくまとめています。ぜひ参考にしてくださいね。

また、墓じまいの際には、親族間・寺院など度のトラブルに発展してしまうケースも珍しくありません。

それだけでなく、予想以上に「時間」や「手間」もかかってしまいます。

そんな方におすすめなのが、墓じまいの代行業者「私たちの墓じまい」です。

代行業者「私たちの墓じまい」なら、永代供養はもちろん、行政手続きや離檀代行も行ってくれます。

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自宅近くにお墓を移動する

お墓の管理が難しいと感じる理由のひとつに「お墓が遠い」ということがあるかもしれません。

先祖代々のお墓は地方にあるケースも多く、頻繁に足を運べないという場合もあるでしょう。

自宅近くにお墓を移すことができれば、移動の手間も省け、いつでもお墓参りに行くことができます。

ただし、勝手に遺骨を移動させることは禁止されていますので「改葬」の行政手続きをしなければなりません。

改葬にはまとまった時間と費用がかかるため、後継者の問題なども考慮しながら、慎重に検討するようにしましょう。

代行サービスの利用

「お墓は残したいけれど、お墓まで遠く、忙しくてお墓参りに行けない」という方も多いかもしれません。

この場合は、代行サービスを利用するのもひとつの方法です。

「墓参り代行サービス」とは、お墓参りに行きたくても行けない方のために、お墓の掃除やお墓参りを代わりに行ってくれるサービス。

主に、合掌礼拝や墓石の洗浄・敷地内の掃除やお供えなどに対応してもらえます。

一般的には、お墓参りが終わった報告と共に、お墓の写真も合わせて送ってもらえるため安心です。

費用相場は5,000円〜12,000円程度となっており、お墓の場所や依頼する業者によっても変わってきます。

まとめ｜お墓は祭祀財産となるため相続放棄できない

本記事では、相続放棄した場合、お墓はどうなってしまうのか？お墓を継承したくない時の対処法について詳しく解説してきました。

何らかの理由で相続を放棄した場合であっても、お墓は継承されるということがわかりましたね。これは、お墓が「祭祀財産」に分類されるため。「お墓を継承したくないので、相続放棄する」ということはできません。

被相続人（亡くなった人）から「祭祀承継者」に指名されていた場合には、辞退することができない点も覚えておきましょう。

「どうしてもお墓の管理が難しい」という時には、墓じまいや改葬などを検討するのがおすすめです。

ただし、墓じまいや改葬には、まとまった時間と費用がかかります。親族間でしっかりと話し合いを行い、後悔しない選択をしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。