「やっぱり遺産分割に納得できない…やり直しは可能なの?」「遺産分割協議が終わってから、新たな財産が見つかった。はじめからやり直したい」
このような疑問をお持ちの方も多いですよね。
財産の取り分に不満があったり、遺産分割が終わってから、新たな不動産が見つかったりした場合には「やり直し」を検討することもあるかもしれません。
そもそも、遺産分割のやり直しは可能なのでしょうか?
遺産分割は、原則として、やり直すことはできません。それぞれが、遺産分割協議書に署名押印したことで「合意」したとみなされるからです。
しかし、中にはやり直しできるパターンもあります。
やり直すためには、一定の条件をクリアしている必要があり、時間やコストもかかるため注意しなければなりません。
そこで本記事では、遺産分割のやり直しが可能となる条件ややり直しができないパターン、注意点について詳しく解説していきます。
遺産分割協議のやり直しが可能なパターン
遺産分割協議は原則として「やり直しができない」とされています。
これは、遺産分割協議書に相続人全員が署名押印したことで、法的に有効な書類となっているためです。
しかし、一定の条件を満たすことによって、やり直しが可能となります。
遺産分割協議について、さらに詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
遺産分割のやり直しができるのは、下記の3パターンです。
- 解除
- 取り消し
- 無効
ひとつずつ確認していきましょう。
解除
遺産分割協議をやり直せるパターン1つ目は「解除」です。
「解除」とは、すべての相続人が遺産分割協議のやり直しに合意している場合のこと。
一般的に、相続人の中の一部の人が「やり直し」を希望している際には認められませんが、全員の合意があればやり直しが認められます。
解除が行われるのは、主に下記のような理由があるでしょう。
- 遺産分割協議を行なって、すべての手続きが終わった後に、新たに遺産(財産)が見つかった場合
- 被相続人の事業を継ぐという理由で同居している長男が自宅を相続したが、状況が変わり、次男が事業を継ぐことになった
また、不動産や預貯金など、新たな財産が発覚した場合には「新たに見つかった財産のみ」の遺産分割を行うことも可能です。
取り消し
遺産分割協議のやり直しができるパターン2つ目は「取り消し」です。
取り消しとは、既に合意済みの遺産分割協議が「脅迫」または「詐欺」などによって成立していた場合に用いられる方法。
「取り消し」が使われるには、下記のようなケースがあります。
- 生前贈与を受け取っていないと言っていた相続人が、実は生前贈与で現金を受け取っていたことが後に発覚した場合
- すべての財産について遺産分割をしたはずだったが、相続人の1人が、被相続人の財産を隠していたことがわかったとき
- 第三者に脅迫されて、恐怖心から遺産分割協議に合意した場合
上記のようなケースでは、遺産分割協議のやり直しが認められます。ただし「取り消し」を行う際の時効は「5年」となっているため、注意が必要です。
無効
遺産分割協議のやり直しができるパターン3つ目は「無効」です。
先程触れた「解除」や「取り消し」と異なり、無効の場合は、はじめから遺産分割協議が存在していなかったことを指しています。
無効に当てはまるケースは、下記のような事例です。
- 相続人全員が「遺産分割協議」に参加していなかった場合
- 相続人の中に「判断能力」にかける人物がいた場合(未成年者が単独で参加していたり、認知症患者が参加していたりするケース)
ひとつ目の「全員が参加していなかった場合」は、故意ではなく、後から相続人を見落としていたことが発覚した際にも適用されます。
相続人を見落としてしまうと、遺産分割協議自体が無効となってしまい、煩雑な手続き・話し合いをゼロからやり直すこととなりますので注意しましょう。
また、遺産分割協議を行う際に、未成年や認知症の方がいる場合にも気をつけなければなりません。
相続人の中に未成年、または認知症患者がいるときの対応については、下記の記事で詳しくまとめています。ぜひ合わせてチェックしてみてください。
遺産分割協議のやり直しができないパターン
遺産分割協議は、基本的にやり直すことができないということは、先に触れてきました。
その中でも「絶対にやり直しができない」というパターンも存在しています。
それが「遺産分割審判によって決定された遺産分割」です。
遺産分割協議で、すべての相続人の合意が得られず、家庭裁判所での「遺産分割調停」へ進んでしまうケースも少なくありません。
遺産分割調停でも決着がつかない際には、裁判所に判断を仰ぎ、分割方法を決定してもらうのです。
遺産分割調停、および遺産分割審判の内容については、下記のリンクから確認できます。
遺産分割協議をやり直す際の注意点
遺産分割協議のやり直しを検討するときには、あらかじめ知っておきたい注意点があります。
- 時間と手間がかかる
- 財産状況が変化している可能性もある
- 税金を余計に支払うこともある
ひとつずつ確認していきましょう。
時間と手間がかかる
遺産分割協議のやり直しは、非常に大変な作業となります。
必要書類を集め直すのはもちろん、名義変更を終えた不動産などの手続きも、やり直す必要があるのです。
これらの手続きには当然、再度「費用」がかかることになります。
また、既に合意済みの遺産分割協議からやり直しを決定するまでの間に、亡くなった相続人がいるという可能性も。
その場合には、亡くなった方のすべての相続人に、遺産分割協議への参加が義務付けられてしまいます。
手続きが煩雑で時間がかかるだけでなく、費用もかさみ、遺産分割協議へ参加しなければならない相続人も増えるという恐れもあるのです。
財産状況が変化している可能性がある
不動産や株式の価値は、日々変化するものです。
遺産分割協議をやり直す場合、当初の「評価額」から変動している可能性も少なくありません。
不動産であれば、再度正確な評価額を出してもらう必要があり、名義変更のやり直しも必要です。
株式についても、株価の変動は激しいため、当初の予定よりも大幅に下落しているケースも十分に考えられます。
再評価のために時間やコストもかかりますし、当初の取り分よりも少なくなり、親族間同士での揉め事に発展する可能性もあるため気をつけなければなりません。
税金を余計に支払うこともある
遺産分割協議のやり直しにおいて、税金の支払いも忘れてはいけないポイントのひとつです。
不動産が含まれている場合には「登録免除税」がかかりますし、不動産がない場合でも「所得税」や「贈与税」が発生するケースも。当初「相続税」を支払ったにもかかわらず、遺産分割協議のやり直しによって、新たに「贈与税」や「所得税」がかかることもあるのです。
その上、当初支払った「相続税」は、返金されることはありません。
不動産においては、対象の不動産に「登録免許税」を2回支払うこととなるのです。
遺産分割協議のやり直しでは税負担も重くのしかかってきますので、あらかじめ税理士などに依頼し、税金のシミュレーションを行うことが重要になるでしょう。
まとめ|遺産分割協議のやり直しには条件がある
本記事では、遺産分割協議のやり直しができるケースやできないケース、やり直す際の注意点について詳しく解説してきました。
遺産分割協議は原則として、やり直すことはできません。これは、遺産分割協議書にすべての相続人が署名押印したことによって「法的に有効な書類」であることが認められるからです。
しかし、一定の条件を満たせば、やり直しができることもわかりましたね。
やり直す際の注意点の章でも解説した通り、遺産分割協議のやり直しには、非常に多くの時間と手間・コストがかかります。税金を余計に支払うケースもありますので、想像以上の負担が掛かる場合も。やり直すかどうかの判断は、慎重に行うようにしましょう。
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