被相続人(亡くなった人)が遺してくれた遺産を相続することになった場合、相続人の間で話し合いがまとまらないケースも少なくありません。
「1人で不動産を相続したい」「遺産の分配方法に納得できない」など、さまざまな意見がぶつかり合い、遺産分割協議を進めることができなくなるのです。
そのような場合、家庭裁判所に申し立てを行い「遺産分割調停」を使用することとなります。
「遺産分割調停ってどんなことをするの?」「そもそも、どのくらいの期間がかかるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、遺産分割調停とはどのようなものなのか?必要書類や遺産分割調停までの流れ、申し立て後の手順について詳しく解説していきます。
遺産分割調停とは?
遺産分割調停とは、遺産分割を行う際に、相続人同士での話し合いがまとまらない場合に利用する「家庭裁判所の手続き」です。
被相続人(亡くなった人)の遺産を受け取ることができる相続人が「1人」であれば、話し合いを行う必要はありません。
しかし、一般的に、相続人が複数人いるケースが多いはずです。
この場合、相続人の間で、どのように遺産を分けるのか話し合いを行います。この話し合いが「遺産分割協議」で、すべての相続人が相続内容に合意しなければなりません。
遺産分割協議の詳細については、下記の記事でまとめています。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。
しかし、意見が一致しなかったり話し合いがもつれたりした場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることとなるのです。
遺産分割調停でかかる期間は「おおよそ1年~2年」と、非常に長期戦になります。これは、調停を行う回数が、平均して7回~10回必要となるためです。1度調停が行われると、次の調停まで「1ヶ月か~1ヶ月半」の時間を空けなければなりません。
また、場合によっては20回以上かかるケースも。遺産分割調停で決着がつかない時には「遺産分割審判」へと移行します。
遺産分割調停の申し立てに必要な書類
遺産分割調停を行うことになった場合、必要となる書類を準備しなければなりません。
遺産分割調停での必要書類は、下記の通りです。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍の附票
- 被相続人の住民票除票
- 登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 借地権や借家権を証明できる文書
- 預貯金残高証明書や通帳
- 株式・社債・投資信託・保険・出資金等の内容を示す文書
- 遺言書(被相続人が作成している場合)
- 遺産分割協議書(作成済みの場合)
上記が、遺産分割調停に必要となる書類一覧です。例えば、相続する遺産の中に「不動産」がない場合には「登記事項証明書」や「固定資産評価証明書」などは必要ありません。
また、預貯金がない場合には「預貯金残高証明書」や「通帳」は不要です。
被相続人が遺した遺産によって、必要となる書類も異なりますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
遺産分割調停にかかる費用は?
遺産分割調停を行うには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
遺産分割調停は、専門家に依頼する場合だと「数十万円」の費用が必要となります。
遺産分割調停で必要となる費用の内訳は、下記の通りです。
項目 | 費用相場 | 費用の負担者 | |
---|---|---|---|
共通項目 | 遺産分割調停申立代金 | 1,200円 | 遺産分割調停を申し立てた者 |
郵便切手代 | 数千円 | ||
必要書類の発行手数料 | 数千円~数万円 (相続人の人数によって異なる) | ||
家庭裁判所までの交通費 | 実費 | 相続人各自 | |
専門家に依頼した場合 | 弁護士に依頼するケース | 数十万円~5数百万円 | 依頼人 |
司法書士に依頼するケース | 10万円前後 | ||
不動産鑑定士に依頼した場合 | 20万円~50万円 |
上記が、遺産分割調停で必要となる費用の相場となります。表を確認してもらうとわかるように、遺産分割調停を申し立てる費用は「1,200円」と少額です。
相続人が多かったとしても、合計1万円~2万円程度で申し立てを行えることがわかります。
しかし、専門家に依頼する場合には注意しなければなりません。
司法書士は比較的安い費用で依頼を行えますが、不動産鑑定士や弁護士に依頼するときには、まとまった金額を準備する必要があります。
相続手続きの代行でかかる費用については、下記のリンクから詳細を確認できますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
遺産分割調停までの流れ
ここからは、遺産分割調停までの流れについて確認していきます。
- 相続が開始され、遺言書の有無を確認する
- 相続人同士での遺産分割協議で意見がまとまらない
- 遺産分割調停の申し立てを検討する
遺産分割調停が行われるまでの流れは、大まかに下記の3つとなります。
被相続人が亡くなり、相続が始まった時点で「遺言書の有無」について確認しなければなりません。
遺言書が作成されていた際には、基本的に遺言書通りに遺産を分割することになります。
遺言書が作成されていなかった場合には、法律で定められた規定に基づいて「遺産分割協議」を進めていきます。
例えば、相続人が「長男」と「次男」の2人の場合。遺産は「不動産」と「預貯金」の2つでした。不動産の資産価値は「約2,000万円」、預貯金も「2,000万円」であれば、揉めることなく遺産分割できるかもしれません。
しかし、同じく「長男」「次男」の2人が相続人で、遺産は「不動産のみ」というケースも考えられます。
この場合、売却すれば「1人1,000万円ずつ」の遺産分割ができますが、どちらかが「売却したくない」という可能性もゼロではありません。このように、意見が一致せず、平行線を辿った際に「遺産分割調停」を検討することになるのです。
遺産分割調停のメリット・デメリット
遺産分割調停を行う上でのメリットとデメリットについても把握しておきましょう。
- 第三者が中立的な立場から話し合いを進めてくれる
- 相手方と顔を合わせないため、感情的にならずに済む
- プライバシーが守られている
上記が、遺産分割調停を申し立てた際のメリットです。
相続人同士だけでの話し合いの場では、どうしても冷静さを欠いてしまい、なかなか話し合いが進まないケースもあります。しかし、中立的な立場の第三者(調停委員)が間に入り、しっかりと意見を聞いてくれるので感情的にならずに済むでしょう。
また相手方(他の相続人)と顔を合わせる必要もなく、調停は非公開で行われますので、プライバシーにも配慮されているため安心です。
- 必ずしも決着(全員が合意)するとは限らない
- 非常に長い時間がかかる可能性が高い
- 欠席してしまうと主張が受け入れてもらえない
遺産分割調停を行う主なデメリットは、上記の3点となります。
時間や手間といった大きな労力をかけて臨んだ遺産分割調停であっても、必ず決着がつくとは限りません。何度調停を繰り返しても、相続人全員の合意が得られないという可能性もあります。
長い場合には2年以上かかってしまうケースもあり、それでも意見がまとまらずに不成立となり「遺産分割審判」へと移行するケースもあるでしょう。
また、何らかの理由で調停に欠席する場合もあるかもしれません。その場合裁判官や調停委員からの心象が悪くなったり、自分の意見が通らなくなってしまったりします。
正当な理由を持たずに欠席した際には、過料が課せられることもありますので注意しなければなりません。
まとめ|遺産分割調停は専門的知識が必要!専門家への依頼を検討しよう
本記事では、遺産分割調停とはどのようなものか?必要書類や費用相場、流れやメリット・デメリットについて詳しく解説してきました。
遺産分割調停とは、被相続人(亡くなった方)の遺産を分配する際に、相続人同士が取り分についての意見がまとまらない時に申し立てる手続きであることがわかりましたね。特に、遺言書が作成されていない場合などには、分割方法などについて遺産トラブルになってしまうケースも珍しくありません。
専門的な知識も必要となりますので、スムーズに進まない場合には専門家への依頼も視野に入れると良いでしょう。
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