老後資金を貯める上で、重要な役割を果たすのが「退職金」です。
平均寿命が延びていることやインフレによる物価の高騰などもあり、老後に必要となる資金は、年々増加傾向にあります。
2019年の時点では、老後資金は夫婦2人で2,000万円という「老後2000万円問題」が話題となりました。しかし2024年現在、単身者においても「2,000万円では足りない」といわれています。
そこで重要になるのが「退職金の運用」です。
「これまで、資産運用をしたことがない」「60歳から投資を始めるときの注意点は?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、退職金の運用が必要な理由や運用のポイント、おすすめの資産運用について詳しく解説していきます。
「投資の経験はないけれど、退職後から始められる資産運用はあるの?」「リスクの少ない運用方法を探している」という方の参考になると幸いです。
退職金の運用が必要な理由3選
退職金をそのまま残しておくだけでなく「運用」することが重要である理由には、どのようなことがあるのでしょうか。
退職金の運用が必要となる理由は、主に下記の3点です。
- 退職金が年々減少しているため
- 平均寿命が延びているから
- 年金の受給額が減っている
順番に確認していきましょう。
退職金な年々減少しているため
退職金を運用すべき理由の1つ目は、年々退職金の額が減少しているためです。
1997年(平成9年)の退職金は、厚生労働省の「就労条件総合調査」によると「2,868万円」でした。その後、2003年(平成15年)には「2,499万円」となり、2013年(平成25年)は「1,941万円」にまで減少したのです。さらに2018年(平成30年)においては、1997年よりも1,000万円以上減少し「1,788万円」となっています。
このように、退職金は年々減少傾向にあり、今後も下がり続ける可能性も。
以前のように「退職金があれば、当面の資金は何とかなる」という時代ではなくなったため、運用して老後資金を確保する必要があるのです。
退職金の減少につきましては、下記の記事でも詳しくまとめています。ぜひチェックしてみてくださいね。
平均寿命が延びているから
平均寿命が延びていることも、退職金の運用が重要となる理由のひとつ。
【日本人の平均寿命の推移】
男性 | 女性 | |
---|---|---|
1955年 | 63.60歳 | 67.75歳 |
1990年 | 75.92歳 | 81.90歳 |
2023年 | 81.09歳 | 87.14歳 |
2040年(推計) | 83.27歳 | 89.63歳 |
上記の表を見るとわかるように、男性・女性共に、平均寿命は年々延びていることがわかります。
平均寿命が延びるということは、それだけ長く「老後資金」も必要となるのです。物価高騰に伴い、退職後、年金の収入だけでは不足してしまいます。
退職金と年金だけでは、老後資金が心許なく感じるはずです。65歳まで働いた場合でも、老後の生活は20年前後あり、女性はおおよそ25年となるのです。
この期間、預貯金を切り崩して生活することになるため、やはり退職金の運用を行い少しでも資産を増やしておくのが賢明でしょう。
年金の受給額が減っている
退職金が減少傾向にあり、平均寿命が延びているだけではなく、年金の受給額も減っているため注意しなければなりません。
下記が、年金受給額の推移です。
【平均年金月額の推移】
旧厚生年金 | 国・共済年金 | 地方・共済年金 | |
---|---|---|---|
2000年 | 175,865円 | 219,605円 | 234,931円 |
2005年 | 165,083円 | 209,025円 | 222,659円 |
2010年 | 150,406円 | 195,812円 | 204,688円 |
2015年 | 145,305円 | 187,220円 | 192,075円 |
2020年 | 144,366円 | 185,491円 | 188,741円 |
上記の表からもわかるように、平均年金月額の推移は、年々減少しています。
これは、深刻な「少子高齢化社会」の影響も大きく、保険料を納める「現役世代」が少ない一方で年金を受給する「高齢者の比率」が大きすぎることが原因です。
少子高齢化は現在もなお、加速しているため、今後も年金の額は減っていくことが予想できます。
そのため、退職金を運用し、老後資金を維持していくことがポイントです。
退職金を運用する際に注意すべきポイント
退職金を運用する際に、覚えておきたいことがあります。
一言で「退職金(お金)」といっても、その用途はさまざまです。
今ある資産を、下記の3つに分類してみましょう。「退職金」と一括りにするのではなく、色分けを行うことによって、使い道が明確になり効率的に資産運用できるようになります。
- 生活に必要なお金
- 将来使う予定のあるお金
- 当面使わないお金
ひとつずつ解説していきます。
生活に必要なお金
まずは、生活に必要となるお金を確保します。住宅にかかる費用や食費・通信費や光熱費などの「固定費」を算出しておきましょう。
また、いつ風邪を引いたり怪我をしたりするかわかりません。それだけでなく、交際費や予備費なども合わせて準備しておくと安心です。
1ヶ月あたり、いくら必要か計算できたら、半年〜1年分程度の生活費をまとめて口座に入れておきましょう。
将来使う予定のあるお金
将来使う予定があるお金とは、現時点で必要になることがわかっているお金のことです。
例えば、引越しの予定があれば引越し資金、家のリフォームを検討している場合はリフォーム代などが該当します。
それ以外にも、旅行費用や教育費・万が一の事態に備えたお金も含まれるでしょう。
ここで重要となるのが「将来」はいつまでを指すかについてですよね。10年後や20年後であっても「将来」になります。
しかし、この場合の目安は「3年前後」を意識することが大切です。
あまりにも先の予定の場合は、一旦排除します。なぜなら、物価なども大きく変動していることが予想されるため、時期が来てから準備すると良いでしょう。
当面使わないお金
当面使わないお金とは、退職金から「生活に必要なお金」と「将来使う予定のあるお金」を差し引いたものです。
この「残った退職金」を明確にすることで、運用方法なども変わってきます。
ただし、当面使わないお金についても「細分化」することを意識しましょう。
例えば、自分にもしもの事があった際に、家族に迷惑をかけないためのお金。孫へのお祝いに使いたいお金などは、残すべきお金となります。
それ以外のお金は「運用に使うお金(増やすべきお金)」となるのです。
老後の生活を左右する退職金|おすすめの資産運用
老後資金の生活を左右するといっても過言ではない「退職金」は、慎重に運用したいものですよね。
「老後資金が足りないので、大きく増やしたい」と考えてしまいがちですが、それはNGです。特に、退職金受け取り後は、気持ちが大きくなってしまうこともあるため注意しなければなりません。
退職金の運用は、リスクをしっかりと考慮して、堅実な投資を行うのがベスト。おすすめの資産運用は下記の3つです。
- 個人向け国債
- 投資信託
- 不動産投資
ひとつずつ見ていきましょう。
個人向け国債
退職金の資産運用でおすすめなのが「個人向け国債」です。
10,000円という少額から投資できる点も大きな魅力。また、元本割れしないため、リスク回避しながら運用ができます。
ただし、利回りが低いため注意が必要です。
株式や投資信託と比較すると、売買できる場所が限られていたり、購入できる時期が限られていたりする点にも気をつけましょう。
投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金を、投資家に代わって「プロの運用者(投資の専門家)」が運用して利益を分配する金融商品です。
数千円から投資を始められるので、初心者でも無理なく手軽に資産運用を行えます。特に、資産運用の経験がない方は「どの銘柄を選べば良いかわからない」「売り時っていつなの?」といった不安をお持ちのはずです。
投資信託であれば、自分で売買するわけではありませんし、銘柄を選ぶ必要もありません。分散投資としても最適です。
ただし、デメリットもあるので注意が必要となります。投資信託のデメリットは、国債とは違って「元本割れするリスク」もあることです。
また、プロの運用者が売買を行ってくれますが、購入時や保有期間中、売買する際に手数料がかかることも覚えておかなければなりません。
不動産投資
不動産投資も、退職金の運用におすすめしたい投資のひとつです。
一言で「不動産投資」といっても、その種類はさまざまで、それぞれの運用資金によって選択できることもポイント。
資金に余裕があれば「アパート・マンション一棟投資」などがあり、少ない資金で運用したい場合には「区分マンション投資」「トランクルーム」「駐車場」などがあります。
「使っていない土地を持っている」と言った場合には、駐車場(コインパーキング)経営がおすすめ。小さな土地でも有効に活用できます。
不動産投資のメリットは、インフレに強い点や、安定した収入を確保できること。また、節税効果もあり、資産価値の上昇にも期待が持てます。
注意したい点は、国債や投資信託と比べると「初期費用」が大きくなってしまうことや、空室リスクがあることです。
また、災害の多い日本においては、台風や地震による不動産の損傷にも注意しなければなりません。
まとめ|退職金の資産運用は事前の計画が大切
本記事では、退職金の運用が必要だといわれる理由3選や運用前に覚えておきたいポイント(お金の色分け)、おすすめの資産運用について詳しく解説してきました。
ひと昔前までは「退職金があれば、老後はなんとかなる」といわれていましたが、時代が変わり、資産運用しなければ厳しいということがわかりましたね。
主な理由には、退職金の減少や平均寿命が延びている点、年金が年々減っていることなどが挙げられます。
今後はさらに状況が悪くなる恐れもあるため、退職金は慎重に運用していかなければなりません。
大きく増やしたいという気持ちがあっても、退職金で「リスクの高い投資」を始めるのはNG。老後資金が一瞬で枯渇してしまう恐れもあります。
退職金は、老後の生活を支える大切なお金ですので、事前にしっかりと計画を立てるようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。