年金の繰り下げ受給は得をする?手続きの方法やメリット・デメリットを解説!

年金 繰り下げ受給 メリットデメリット

厚生労働省によると2023年現在、男性の平均寿命は「81.09歳」、女性は「87.14歳」となっています。

長寿大国である日本において、老後資金でお悩みの方も多いのではないでしょうか。

老後資金は、ひと昔前まで、夫婦2人で「2,000万円」と言われていました。しかし、度重なる物価の高騰により、現在では「単身世帯で3,000万円」「夫婦2人で6,000万円」程度の資金が必要とされています。

そこで注目したいのが「年金の繰り下げ受給」です。

「働ける間は働いて、年金の受け取りを繰り下げたいけれど、手続きは難しい?」「繰り下げ受給するメリットとデメリットは?」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。

そこで本記事では、年金の繰り下げ受給とはどのような制度なのか?手続きの方法やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

目次

年金の繰り下げ受給とは?

そもそも、年金の繰り下げ受給とは「老齢年金を65歳で受け取らず、66歳以降に遅らせることができる制度です。

繰り下げる期間は66歳から75歳までの間で自由に選択することができ、繰り下げた期間に応じて、年金を「増額」できます。

増額率が一生涯変わらない点もポイントです。

現在、高齢化社会が加速していることもあり「シニア向けの求人」もよく見かけますよね。

「身体が動かせるうちは仕事をして、引退後にまとまった年金を受け取りたい」という選択が可能となりました。

年金を繰下げ受給でどれだけ貰えるの?【計算方法】

年金の繰り下げ受給を検討している方にとって、「遅らせる期間と貰える金額」が気になるところですよね。

1年遅らせるといくら増額されるのか?3年では?5年なら?といった疑問も生まれるでしょう。

増率額の計算方法は、下記の通りです。

増額率(%)=0.7(%)×65歳に達した月〜繰り下げ申出月の前月までの月数

下記が、繰下げ増額早見表です。「計算が面倒」「計算方法がよく分からない」という場合に便利ですので、参考にしてください。

【繰下げ増額率早見表】

引用元:日本年金機構
引用元:日本年金機構

上記の表を見るとわかる通り、1ヶ月単位で増額率が変わります。ただし、11ヶ月目未満は選択できませんので注意しましょう。

年金の繰り下げ受給をするための手続き

そもそも年金の受け取りは、自動的に行われるものではなく、手続きが必要です。

中には「65歳になったら、銀行に振り込まれるのでは?」と思っている方もいるかもしれません。

必ず65歳、または受給開始年齢の3ヶ月前前後に、ご自宅に「年金請求書」が届きます。(65歳以前に、特別支給の「老齢厚生年金」を受給していた場合に限り、65歳になってから「年金請求書」が届く)

この通知を受け取り、請求手続きをしなければならないのです。

繰り下げ受給をしたい場合には、自分が年金の支給を希望するタイミングになってから、お近くの「年金事務所」に「繰り下げ請求書」の提出を行います。

手続きが完了となった時点で、生涯続く「加算率」が決定しますので、申請する時期には注意しなければなりません。

年金を繰り下げ受給するメリット

年金を繰り下げ受給するメリットは、増額した年金を、生涯継続して受け取ることができる点です。

例えば1年間受け取りを遅らせるとします。66歳0ヶ月から年金受給を始めると「8.4%」増額されるのです。また、67歳0ヶ月から年金を受け取る場合。遅らせた期間は「2年間」です。2年間受け取りを先延ばしにすると「16.8%」も増額されることになります。

わずか2年で「16.8%」の増額が保証されるのは、大きなメリットと言えるでしょう。

「長い老後を、少しでも豊かに過ごしたい」「年齢を重ねてから苦労したくない」という方にとって非常に効果的な制度です。

ある程度の貯蓄があり、65歳から受給しなくても生活に問題がない場合は、先の生活を考慮して受給するタイミングを選ぶようにしましょう。

年金を繰り下げ受給するデメリット

一方で、年金を繰り下げ受給する際のデメリットも存在しています。

主なデメリットは、下記の3つです。

年金を繰り下げ受給する際の3つのデメリット
  • 保険料や税金が上がってしまう
  • 加給年金を受け取れない可能性がある
  • 受給総額が少なくなってしまうことも

ひとつずつ確認していきましょう。

保険料や税金が上がってしまう

年金を繰り下げ受給する際に気をつけなければならないデメリットの1つ目は、保険料や税金が上がってしまう可能性もある点です。

上がる可能性がある理由は、本来65歳から受け取るはずの年金を繰り越すことによって、それ以降は年金額が増えることになります。

そのため、増額した分だけ「社会保険料」や「所得税」「住民税」の負担も大きくなってしまうのです。

この税金や保険料の負担額は、先延ばしした期間によって決まるものではありません。年金受給額は、人それぞれ異なります。本来の受給額が多い人ほど、繰り下げ受給することによって、増額される金額も大きくなるのです。

その場合、保険料や税金が負担に感じてしまうこともあるでしょう。

加給年金を受け取れない可能性がある

デメリットの2つ目は、繰り下げ受給をすることで、加給年金を受け取れない可能性があることです。

そもそも「加給年金」とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が65歳に到達した際に、配偶者や子ども(18歳未満)を扶養している場合「老齢厚生年金」に追加される形で支給される年金のこと。

加給年金が支給される条件を満たしている方が繰り下げ受給をした場合、加給年金も同時に繰り下げられてしまいます。

したがって、繰り下げ受給で年金の受け取りを先延ばししている期間中に、配偶者が65歳になってしまうと「加給年金」は受け取れなくなってしまうのです。

そのため、配偶者や子どもが「加給年金の対象」となる際には、年金の繰り下げ受給をするのか加給年金を受け取るべきなのかについて慎重に判断しなければなりません。

どちらが効率的なのか、しっかりシミュレーションを行いましょう。

受給総額が少なくなってしまうことも

3つ目のデメリットは、受給総額が少なくなってしまうケースもある点です。

確かに、年金の繰り下げ受給をすれば、1年で「8.4%」2年で「16.8%」も増額されます。75歳を受け取るタイミングに設定した場合は「84%」もの増額率となるのです。

しかし、人生何があるかわかりません。平均寿命は2023年現在も延びており、男性で「81.09歳」女性は「87.14歳」となっています。しかし、病気を患う可能性もありますし、必ずしも平均寿命まで生きられるとは限らないのです。

もちろん、繰り下げ受給は「長生き」すれば、かなりの得を得られます。

ただし万が一のことがあった場合には、受給総額が大幅に減ってしまい、損をすることも。

例えば、70歳で亡くなった場合について考えてみましょう。

年金額が月々「10万円」で、繰り下げ受給を行わず、65歳から年金を受け取るケースです。

10万円×12ヶ月×5年=600万円

年金を受け取った総額は「600万円」となりました。

それでは、繰り下げ受給を実施し、3年後の68歳から受給をスタートしたとします。68歳を受け取るタイミングに設定した場合の増額率は「25.2%」です。

10万円×125.2%=125,200円

1ヶ月あたり「25,200円」も増額していることがわかります。しかし、68歳から受け取りを開始し、70歳で亡くなった場合には「2年間」しか年金を受け取ることができません。

125,200円×12ヶ月×2年=3,004,800円

繰り下げ受給せずに、65歳から受け取るケースと比較して、約300万円近く損をしてしまうのです。

このように、先延ばしが必ずしも「得をする」ばかりではありませんので、十分に検討してから決めるようにしましょう。

まとめ|年金の繰り下げ受給を行う際には生活資金の確保が大切

本記事では、年金の繰り下げ受給とはどのような制度なのか?計算方法や手続き、メリット・デメリットについて詳しく解説してきました。

年金の繰り下げ受給をすることによって、安定した老後を過ごすための選択肢が増え、自分に合った方法で老後のライフプランを決められる有効な手段であることがわかりましたね。

しかし繰り下げ受給をするためには、申請手続きが必要となりますので、忘れずに行うようにしましょう。

また、年金を受け取るタイミングを遅らせるほど増額率が大きくなるというメリットがある一方で、さまざまなデメリットも。

税金や保険料が負担になったり、受給総額が少なくなってしまったりする可能性があるため、ご自身の健康状態や生活資金などを考慮して慎重に検討するようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次