「老後資金は、どのくらい貯めておけばいいの?」「ゆとりのある生活をするために必要となる資金の目安は?」
2023年の統計では、日本の平均寿命は「女性87.14歳」「男性81.09歳」と、前年に比べて延びています。
それだけでなく、インフレの加速に伴って物価が上昇し続けていることもあり、老後に必要となる資金も増加しているのが現状です。
2020年前後には「老後資金は、夫婦2人で2,000万円」と言われていましたが、現在は「夫婦2人で5,000万円以上」ともいわれています。
実際、老後資金の目安はいくらなのでしょう?
そこで本記事では、老後資金の目安はいくらなのか?老後資金の準備が重要となる理由や、これから老後資金を貯めるポイントについて詳しく解説していきます。
「今から老後資金を貯めても遅い?」「他の家庭は、どれくらい貯蓄しているの?」といった疑問をお持ちの方の参考になると幸いです。
【老後資金の目安】いくら必要なの?
2019年6月に発表された「金融審議会 市場ワーキンググループ報告書」において、夫婦2人暮らし(夫65歳以上、妻60歳以上で共に無職)で、老後30年間に不足する金額は2,000万円にも及ぶことが話題となりました。
当時は「老後2,000万円問題」として大きく取り上げられ、毎月「55,000円」が不足するため、30年間で「2,000万円」必要となるという統計が出されたのです。
しかし、更なるインフレが進み、物価の上昇もとどまることを知りません。2024年現在最新の「老後資金の目安」は、いくらなのでしょうか。
まずは、毎月の収入について確認していきます。老後の主な収入源となるのは「年金」です。一言で「年金」といっても、国民年金と厚生年金では収入が大きく異なります。
必要となる「老後資金」の計算方法は、下記の計算式を参考にしてください。
必要となる「老後資金」=(月々の生活費-月々の収入)×老後の生活期間+その他支出
男性 | 女性 | |
---|---|---|
国民年金 | 59,013円/月 | 54,346円/月 |
老齢厚生年金 | 163,380円/月 | 104,686円/月 |
上記が、それぞれの年金における「平均受給額」です。これを踏まえて、毎月必要となる費用を算出し「いくら足りないか」がわかります。
月々足りない費用が把握できれば、そこから20年〜30年間、老後資金がどのくらい必要となるかについて計算することが可能です。
老後資金の目安「夫婦2人暮らし」の場合
まず初めに、夫婦2人暮らしの目安について確認していきましょう。
「趣味や旅行を楽しみたい」「最低限の生活を送るだけで良い」など、ライフプランによって、必要となる資金が変わってくるのは当然です。
また、持ち家なのか賃貸なのかでも、老後資金は異なるでしょう。
令和4年に行われた「生活保障に関する調査」において、最低限の生活で必要となる資金は、月々「228,000円」となっています。
旅行を楽しんだり、趣味活動を行うといった「ゆとりのある生活」を希望する場合には、毎月「379,000円」必要です。
老齢厚生年金の場合、夫婦2人の年金総額は「約270,000円」となります。ゆとりのある生活を送るためには、月々「おおよそ110,000円」足りないことがわかるでしょう。
65歳から90歳までの25年間に不足する金額は、約33,000,000円。国民年金の場合には、受給額が少ないため、50,000,000円以上を貯蓄しておかなければならないという計算です。
上記はどちらも「持ち家の場合」となっているため、賃貸にお住まいの方は、更なる資金を準備しなければなりません。また、この結果には「医療費」および「介護費用」は含まれていないため、実際にはこれ以上の資金が必要になるのです。
老後資金の目安「一人暮らし」の場合
続いて、一人暮らしの方の目安について確認していきます。
一人暮らしの男性で国民年金の場合、上記の表の通り、月々の年金受給額は「59,013円」が目安となります。
令和5年に発表された総務省における家計調査によると、高齢者の一人暮らしで必要となる生活費は、月々「165,000円」です。これを、年間に換算すると「1,980,000円」となります。
ただし、この生活費の中には「医療費」や「交通費」なども含んでいるため注意してください。
これを踏まえると、毎月の不足分は「約106,000円」となることがわかります。(国民年金の場合)
例えば85歳まで生きた場合の20年間で計算すると、おおよそ25,000,000円もの老後資金が必要となるのです。
90歳までの25年間では、約32,000,000円を準備しておかなければならないという結果になります。
また、上記は「男性」の年金額を元に計算しましたので、受給額が少ない「女性」の場合には、さらに不足額が大きくなることを覚えておきましょう。
老後資金の準備が重要となる理由
ここからは、老後資金を準備しておくことが重要となる理由について解説していきます。
もちろん、生活していくために、ある程度の資金を確保しておくことは大切です。しかし、3,000万円〜5,000万円の老後資金を確保するのは容易くありません。
「節約すれば、そこまで貯める必要はないのでは?」「本当に何千万も貯めなければならないの?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
老後にまとまった資金を用意すべき理由は、主に下記の3つです。
- 平均寿命が延びている
- 退職金が少なくなっている
- 働き方が多様化している
ひとつずつ確認していきましょう。
平均寿命が延びている
一時はコロナ禍で平均寿命が短縮しましたが、2024年現在はコロナも落ち着き、平均寿命が延びています。
男性で81.09歳、女性で87.14歳と、退職後も長い老後生活が続くのです。例えば60歳で仕事を辞めた場合、年金収入のない期間が5年間あります。
65歳からは年金を受給できますが、それでも20年程度は、預貯金から不足分を補わなければなりません。
もちろん、自分がいつまで健康に生活できるかはわかりませんが、平均寿命は今後も延びていく可能性もあります。また、平均寿命はひとつの目安です。100歳以上の高齢者も「95,119人(令和5年9月現在)」と増えているため、先を見据えて老後資金を貯める必要があるでしょう。
資金に余裕があれば、選択肢も広がりますので、事前の準備が大切となるのです。
退職金が少なくなっている
退職金の減少も、老後資金に大きな影響を与えている要因の一つです。
退職金は、老後の生活を支える重要な役割を果たしますよね。
厚生労働省から発表された「就労条件総合調査」によると、1997年(2,868万円)から2018年(1,788万円)までの期間に、おおよそ1,000万円以上も退職金の支給額が減少しています。
上記の表を見るとわかるように、このままでは、近い将来「1,000万円を切ってしまうのではないか」といった不安を感じてしまうでしょう。
予定している退職金よりも、大幅に少ない支給額となるケースもあるのです。今後も、さらなる減少が続く可能性もゼロではありません。
退職金は、老後資金を支える心強い制度ですが、退職金だけに頼り切ってしまうと「支給額が思ったよりも少ない!」という事態に陥ることも。
そのため「退職金が少ないかもしれない」というケースも頭に入れて、老後資金を準備しておく必要があるのです。
働き方の多様化
新型コロナウイルスが大きなきっかけとなり、近年では、働き方の多様化が進んでいます。
会社の雇用に捉われることなく、フリーランスや在宅勤務・副業など、自由な働き方が広がっているのも周知の事実です。
「大企業に勤めていても、安心とは限らない」「倒産やリストラ、解雇の可能性もある上に、給料が上がる保証もない」と考える人も多く、今後も働き方の多様化は加速していくでしょう。
上記でも触れたように、退職金は老後資金の大きな確保につながります。しかし、会社に属さないという人が増加しているため、退職金を受け取れないケースが多くなります。
自由な働き方を実現させながら、老後資金をしっかりと準備するためには、早い段階から確実な資産形成を行う必要があるでしょう。
老後資金を貯めるポイント3選
「どうすれば老後資金を貯められる?」「老後が不安…何か良い方法はある?」と不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
老後資金を貯めるポイントには、下記のような方法があります。
- 早めの準備が大切
- 身体が動かせるうちは「働く」ことを意識する
- 年金の繰り下げ受給を視野に入れる
順番に見ていきましょう。
早めの準備が大切
長い老後生活は、十分な資金があるかどうかで、過ごし方は大きく変わってきます。
60歳まで働いたとしても、平均寿命までは少なくとも20年以上の期間があるのです。
長い老後生活を、自分らしく有意義に過ごすためには、やはり早めの準備が必要不可欠。NISAやiDeCoなどの資産運用はもちろん、不動産投資なども視野に入れると良いかもしれません。
「老後について考えるのは、まだ早すぎる」ということはなく、NISAやiDeCoは、運用期間が長いほどメリットも多くなります。
身体が動かせるうちは「働く」ことを意識する
「早くリタイヤして、第二の人生を楽しみたい」と考えている方も多いですよね。
しかし、楽しむためには、やはり「老後資金」が必要です。
退職後も、身体が動かせる間は「働く」ことを意識してみましょう。60歳で退職した場合、90歳までは30年もの時間があります。途中で「老後資金が底をついてしまった」という事態に陥らないとも限りません。
働くことは、健康の維持にもつながりますし、社会との関わりも継続できます。その上、安定した収入も確保できるのです。
退職後に働くことができれば、その分、老後資金の目標額を減らすこともできます。
現在では、高齢化社会に伴い、シニアの求人も少なくありません。元気なうちは働いて、ゆとりのある老後生活を送るのがおすすめです。
年金の繰り下げ受給を視野に入れる
「投資は難しい」「資産運用について、よく理解できていない」という方は、年金の繰り下げ受給を活用してみましょう。
年金の繰り下げ受給とは、65歳から受け取れる年金を後ろ倒しにし、66歳以後75歳までの間で年金を受け取ることができる制度です。
受け取る期間を遅らせた分、1ヶ月あたり「0.7%」ずつ増加していきます。
例えば「70歳」で受け取る場合には「42%」増加し「75歳」であれば「84%」も増加するのです。
元の受給額が、年間「150万円」のケースであれば、70歳で受け取る場合「213万円」となり、75歳なら「276万円」となります。
「生活資金に余裕がある」「70歳までは働くつもりでいる」という方は、年金の繰り下げ時給を視野に入れると良いでしょう。
「繰り下げ受給」について、さらに詳しく知りたい方は、下記の記事でまとめています。ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ|老後資金は早めの準備が大切!一人暮らしでも2,000万円では足りない
本記事では、老後資金の目安はいくらなのか?夫婦2人のケース・一人暮らしのケースそれぞれの概要や、老後資金が重要となる理由・貯めるポイントなどについて詳しく解説してきました。
老後、月々必要となる費用は、国民年金・老齢厚生年金どちらでも不足してしまうことがわかりましたね。
以前は「夫婦2人で2,000万円必要」と言われていた老後資金ですが、現在は物価の高騰や退職金の減少などもあり、一人暮らしにおいても2,000万円では足りないケースも多くなっています。また、夫婦2人の場合には3,500万円~5,000万円必要となるでしょう。(国民年金か老齢厚生年金によって異なる)
したがって、どのようなケースにおいても年金だけでは生活費が足りず、預貯金を切り崩すことを頭に入れておかなければなりません。
安心して第二の人生を過ごすためには、まとまった老後資金を準備しておく必要があるのです。
早めの対応を心掛けるのはもちろん、資産運用や年金の繰り下げ受給なども視野に入れ、効果的に活用していきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。