「遺言書が無効になるのはどんなとき?」
「公正証書遺言でも無効になる場合があるって本当?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
遺言書は、法律で定められたルールや形式に沿って作成しなければ、無効となるケースもあります。
それだけではなく「遺言書の内容に不満があるので無効にしたい」ということもあるかもしれません。そもそも、公正証書遺言の内容を無効にすることはできるのでしょうか。
そこで本記事では、遺言書が無効となるケースや納得できない遺言書を無効にする方法について解説していきます。
「無効にならない遺言書を作成したい」「遺言書の内容に不満があるので、無効にしたい」とお考えの方の参考になると幸いです。
遺言書が無効になる6つケースとは?
そもそも、作成した遺言書が無効になるのは、どのようなケースなのでしょうか。
主なケースとして、下記のようなことが挙げられます。
- 法律に基づいた形式に沿っていない場合
- 内容が不明確である場合
- 口授を欠いていた場合
- 認知症などで遺言能力がなかった場合
- 公序良俗に違反していた場合
- 証人が不適格だった場合
ひとつずつ確認していきましょう。
法律に基づいた形式に沿っていない場合
遺言書が無効となるケース1つ目は、形式に沿っておらず不備があった場合です。
そもそも遺言書には「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「自筆証書遺言」の3種類があります。
それぞれの違いや比較については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
形式に沿っておらず、無効となる可能性が高いのは「自筆証書遺言」です。
例えば、日付が記入されていなかったり署名・押印がなかったりした場合。日付は「〇月〇日」だけだと、形式違反となります。西暦を明記するか「令和〇〇年」などと、正確なものを記載するようにしましょう。
また、訂正や加筆にも定められたルールがあるため要注意です。訂正箇所にも印鑑が必要となるため、忘れずに押印しなければなりません。
自筆証書遺言の書き方の詳細については、下記の記事で解説しています。合わせてチェックしてみてください。
内容が不明確である場合
遺言書が無効となるケース2つ目は、内容が不明確である場合です。
遺言書では、遺言者の遺志を明確に記さなければなりません。「誰にどの財産をどれだけ相続させたいのか」について、正確な内容を記載する必要があります。
例えば「保有していた株式と預貯金を、3人の子どもたちに相続させる」といった内容だった場合。株式の分配方法も明記されていませんし、預貯金の銀行名などもわからないため、曖昧な表現とみなされるのです。
「長女には、〇〇銀行の預金〇〇万円を相続させる」など、誰にどれだけの財産を相続したいかについて、しっかりと記載するようにしましょう。
口授を欠いていた場合
口授とは、遺言者が「口頭」によって、遺言の内容を公証人へと伝えること。
公正証書遺言を作成する場合、遺言者が公証人に対して、自分の遺志(遺言に記載したい内容)を口授します。その内容を、公証人が遺言書に記載するのがルールです。
最終的に、公証人によって記載内容が読み上げられ、問題ないかどうか判断してもらいます。
しかし、事前に第三者と公証人が話し合いを行なっていたり、遺言作成日に遺言者への確認を怠ったりするケースも。
この場合、遺言書が無効となるため注意しましょう。
認知症などで遺言能力がなかった場合
遺言者が認知症を発症していた場合、判断能力がなかったとみなされ、遺言書が無効となります。
しかし、すべての認知症患者に当てはまるわけではありません。
一言で「認知症」といっても、その症状や段階はさまざまです。軽度の認知症であれば、遺言能力があると認められるケースも珍しくありません。
また、医師の立ち会いによって作成された遺言書であれば、遺言能力が認められることもあるため覚えておきましょう。
公序良俗に違反していた場合
遺言書が無効となるケース5つ目は、公序良俗に違反していた場合です。
そもそも公序良俗とは「公の秩序」と「善良の風俗」を略した言葉となっており、法律用語のひとつ。
真っ当な生活を送っていたかどうかを判断するものです。
例えば、遺言書の内容が「不倫相手に財産を相続させる」といったものである場合、遺言書が無効となることも。
ただし、必ずしも無効になってしまうわけではなく、認められるケースもあります。
証人が不適格だった場合
6つ目は、証人が不適格だった場合です。
公正証書遺言と秘密証書遺言の作成には、2名以上の証人が必要となります。
この「証人」が、未成年や推定相続人であった場合、遺言書は無効となるのです。
また、公証人の関係者だった場合も「証人が不適格」と判断されます。
納得できない遺言書を無効にする方法
遺言書の内容に、納得できないというケースも少なくありません。
相続人全員の合意があれば「遺産分割協議」において、納得のいく遺産分割が可能です。
しかし、なかなか話し合いがまとまらず、全員の合意を得るのが難しい場合も。
遺産分割協議や遺産分割調停についての詳細は、下記の記事で詳しく解説しています。合わせてチェックしてみてください。
この場合、遺言書を無効にする方法はあるのでしょうか。
- 遺言無効調停
- 遺言無効訴訟
順番に解説していきます。
遺言無効調停
遺言無効調停とは、遺言書を無効にしたいときに、話し合いを行う手続きのことです。
遺言書の内容に不満がある際や、遺産分割協議で全員の合意が得られない場合に利用されます。
ただし、調停はあくまでも「話し合いの場」です。話し合いを行なっても、意見がまとまらないとわかっているケースも少なくありません。
この場合は、調停を省略して、最初から「訴訟」を行うこともあるでしょう。
遺言書無効訴訟
遺言書無効訴訟とは、裁判所において「遺言書が無効かどうか」を確認してもらうための手続きです。
この裁判において、遺言書が無効と判断されれば、遺言書に記載されている分配方法を阻止することができます。
遺言書無効訴訟は、非常に時間を要するものであり、準備だけでも数ヶ月。第一審〜控訴審、上告審を合わせると、3年以上かかる場合も。
まとまった弁護士費用なども準備しなければなりませんので、慎重に検討する必要があるでしょう。
まとめ|遺言書が無効かどうか不安な場合は専門家へ依頼しよう
本記事では、遺言書が無効となる主な6つのケースや、納得できない遺言書を無効にする方法について詳しく解説してきました。
自筆証書遺言の場合、形式の不備で無効となる場合が多くなりますが、秘密証書遺言や公正証書遺言であっても「必ずしも遺言が認められる」というわけではないことがわかりましたね。
証人の不適格や遺言者の遺言能力の有無、公序良俗の違反など、さまざまな形で遺言書が無効になる可能性もあります。
少しでもリスクを減らすためには、やはり専門家に依頼して遺言書を作成するのがおすすめです。
自分の遺志を実現させるためにも、信頼性・安全性の高い遺言書を作成するようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。以上、参考になると幸いです。